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講談協会会長・宝井琴調師匠に聞く ― 講談の魅力と津の守講談会

  • 7 日前
  • 読了時間: 7分

津の守講談会インタビュー

講談協会 会長・宝井琴調(たからいきんちょう)師匠に聞く


荒木町では、毎月1日・2日・3日の三日間、一般社団法人講談協会による定席(定期公演)「津の守講談会」が開催されています。

今回は、一般社団法人講談協会会長の宝井琴調師匠に、講談という芸能の魅力や、AI時代における生の話芸の可能性、そして「津の守講談会」と荒木町とのご縁について、お話を伺いました。

講談を知らない方にも、きっとその魅力が伝わる――そんな貴重なお話を、ぜひご覧ください。




Q. 講談をまだご覧になったことがない方へ。講談とはどのような芸能で、一番の魅力はどこにあるのでしょうか。


宝井琴調師匠(以下、琴調師匠)

絵本の読み聞かせのように、おじいさんやおばあさん、お父さん、お母さんが子どもたちへ物語を語って聞かせる――そうした、人間が昔から続けてきた営みを洗練させたものが、講談というものなんですよね。

話芸というのは耳から入ってくるもので、講談を聴いていると、日頃の憂鬱や仕事を忘れ、物語の世界へ入り込むことができるんです。そうすることで心が落ち着き、精神的なバランスも取れていくんじゃなかろうかと思います。

ですから、そういう意味で、講談は人間が昔から求めてきた話芸で、だからこそ今日まで続いてきたんだと思ってね。それも講談の魅力なんじゃないでしょうか。

そして、一人の講談師が何人もの人物を演じ分け、お客様それぞれが頭の中に映像を思い浮かべながら楽しめるんですね。それが講談の一番の魅力だと思っています。



Q. 現在の講談人気や、その広がりについてはどのように感じていらっしゃいますか。


琴調師匠

私が入門した頃(注・1974年〈昭和49年〉)、修行時代の講談界はいわば冬の時代でした。講談がこのまま続くとは誰も思っておらず、「滅びてしまう芸能」だと思われていた時代です。

しかし今は、神田伯山*君のような人気の講談師が新しいお客様を連れてきてくださり、その方々が私たちの講談会にも足を運んでくださっています。本当にありがたいことです。

私たちがちょっと自信をなくしていただけで、やっぱりいいものはいいと分かっていただけたんだなという、その喜びがあります。


神田伯山(1983– )講談師。六代目神田伯山。2020年(令和2年)に真打昇進と同時に襲名。公益社団法人日本講談協会所属。一般社団法人講談協会が主催する津の守講談会には出演していないが、宝井琴調師匠ら講談協会所属の講談師との共演も行っている。卓越した話芸と高い人気により、新たな観客層を講談の世界へ呼び込み、現代講談を代表する存在の一人として知られる。




Q. 何百年も人から人へ語り継がれてきた講談を、これからの時代へどのように伝えていきたいとお考えでしょうか。


琴調師匠

すでにAIの時代になり、声優さんも役者さんもAIがしゃべるような時代が来ています。でも、それはある意味で、我々にとってはありがたいことでもあります。

我々は、肉声、つまり人間の声で語り、お客様と相対して、目と目、顔と顔を合わせてお話しする。そこに、お客様が新しいものや新鮮さを感じてくださるんじゃなかろうかと思うんです。

だから、それを我々の魅力にしていきたい。AIの時代だからこそ、むしろチャンスだと思っております。

百人のお客様がみんな講談を好きになることはないでしょう。でも、百人に一人、千人に十人、そして一万人に百人――そんなコアなお客様は必ず生まれると信じております。

その拠点の一つが、この荒木町・津の守になれば、と思っております。



Q. 毎月、荒木町で開催されている「津の守講談会」ならではの魅力を教えてください。


琴調師匠

おそらく、畳の席で演芸を楽しむという機会は、今ではほとんどなくなってきていると思います。だから、この津の守講談会を始めた頃は、ちょっとお客様に戸惑いがあって、「畳は嫌だ」という方もいらっしゃったんですけれども、今では、畳と分かっていて、ご常連の皆さんが開場前から並んでくださり、靴を脱いで畳で講談を聴くという楽しみを覚えてくださったようです。

やっぱり、椅子席で靴を履いたまま聴くのとは、まったく別物なんですね。畳の席でお客様が本当にくつろいでくださる。それが津の守講談会の魅力だと思っております。


また、この会場はノーマイクなんです。

話芸として、これはとても大事なことですが、音響機器を使わず、人間の声をそのまま耳で聞いていただく。そして、私どもは、その耳に向かってしゃべっているんです。

それが我々にとっても勉強の場ですし、お客様にも、人間の声そのものの魅力を楽しんでいただけるんじゃなかろうかと思っております。




Q. 荒木町とのご縁について教えてください。また、荒木町という町で定席を続けてこられて、どのような印象をお持ちでしょうか。


琴調師匠

講談の世界では、「冬は義士、夏はお化けで飯を食う」とよく言うんです。冬は赤穂義士(忠臣蔵)、夏は怪談――そういう演目が多いものですから。ですから、私どもは四谷左門町のお岩様(於岩稲荷田宮神社*)へお参りすることになっています。

その帰りに、「ちょっと昼ご飯でも食べようか」と荒木町へ入ってきたところ、(荒木町「美舟」の店主の)志賀さんとばったりお会いして、「今、こういう小屋ができているんだけれども、やってみませんか」と声を掛けていただいたんです。

ですから、私はまったく、お岩様のご縁、お導きで、この津の守講談会をやらせていただいていると思っています。


で、この舞台は本当に素晴らしいんです。舞台の美しさ、本畳の魅力、そして幕も二枚あります。器として本当に美しい舞台ですから、そこに負けないだけの芸をしなければならない、粗末な芸はできないなと、いつも思っています。

毎月一日から三日まで、定席(定期公演)として続けさせていただいていることは、本当にありがたいです。

これからも、この津の守講談会を続けていきたいと思っています。


於岩稲荷田宮神社(おいわいなりたみやじんじゃ)…東京都新宿区左門町に鎮座する神社。実在した田宮家の娘・お岩を祀り、歌舞伎『東海道四谷怪談』ゆかりの神社として知られる。ただし、『四谷怪談』は史実をもとにした創作であり、実際のお岩夫妻は円満な夫婦であったと伝えられている。現在でも『四谷怪談』を演じる芸能関係者の参拝が絶えない。



Q. 荒木町でお食事やお酒を楽しまれることもあるのでしょうか。


琴調師匠

若い頃は、「よつやこくている*」でよく酔っぱらったんですけどね(笑)。

まさか、ここでこういうことになるとは思わなかったんですね。今では講談会が終わると、この辺で一杯やるようになりました。

ただ、我々の収入で飲めるお店は三軒ぐらいしかないので(笑)、もうちょっと安いお店を開拓したいと思っています。

できれば、講釈師は半額でいいよ、なんて言っていただけるとうれしいんですけどね(笑)。


よつやこくている…東京都新宿区荒木町1(TEL:03-3357-3845)に店を構える老舗バー。昭和の面影を残す落ち着いた雰囲気で知られ、荒木町を代表する名店の一つとして、多くの文化人や芸能関係者にも親しまれてきた。



Q. 最後に、ホームページをご覧の皆様へメッセージをお願いします。


琴調師匠

申し上げたとおり、人間の言葉や日本語の魅力に触れていただくと、ちょっと「やみつき沼」にはまるんじゃなかろうかと思います。

そして、その後はぜひ、「講談の沼」にもはまっていただきたいと思っております。




◆津の守講談会について


「津の守講談会」は、一般社団法人講談協会が毎月開催している定席(定期公演)です。

会場となる「津の守」(新宿区荒木町)は、本格的な高座を備えた会場で、毎月1日・2日・3日の三日間、一般社団法人講談協会所属の講談師による公演が行われています。



歴史ある話芸を身近に楽しめる貴重な機会として、多くの講談ファンはもちろん、初めて講談に触れる方にも親しまれています。

ぜひ一度、津の守講談会で、人の声だけが生み出す話芸の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。



◆インタビューにご協力いただいた店舗


il baccio(イル・バッショ)

荒木町・車力門通りにある書籍バー。店内にはさまざまなジャンルの本が並び、お酒を片手に読書や会話をゆったり楽しめる空間です。バーとしてだけでなく、イベント会場としても利用され、荒木町の文化交流の場ともなります。今回の宝井琴調師匠へのインタビューは、こちらのご協力のもと実施しました。



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